“プレバト俳句”再視記(さいじき)

バラエティ番組「プレバト」の人気コーナー『俳句ランキング』を振り返り。芸能人たちの才能と、毒舌・夏井いつき先生の評価や、いかに!?

第一回炎帝戦~下位編(6/29放送分)

time 2017/07/02

今回は、春の俳桜戦につづき、俳句査定の名人・特待生9人が集結し、現在のランクとは関係なくガチンコ勝負でタイトルを争う、夏の“炎帝戦”です。


炎帝戦のテーマ『海』

最下位


フルーツポンチ村上[特待生1級]

渋滞の 後部座席の 浮き袋

村上:…海に向かう車が渋滞していて、その後部座席にすでに膨らんでいる浮き輪がある、と。渋滞はしてるけど、海へと向かう、そのワクワクした気持ちが浮き輪に出てるという、夏の一コマです。


夏井先生:この句は一応出来上がってはおります。どの言葉も必要な場所にきちんと入っております。ただ、渋滞のこの光景は、海に行く途中なのか、帰ってくる時なのか、それをキチンとやろうと思ったら、いくらでもやれる。どうするか? どこか言葉を外さないと別の情報は入りません。この中で外しても成立する言葉は分かりますか?
村上:“後部”。
夏井先生:その通りです。分かるならさっさとやれよ、というかんじですね。“渋滞の”のあと(後部を消して)“座席”に行ってください。渋滞だけど“弾み”ます。

渋滞の 座席を弾む 浮き袋

こうすると、子どもたちが膨らました浮き袋を体に入れてたり、投げたり、そんなかんじになるでしょ。帰ってくる光景だってできますよ。

渋滞の 座席にしぼむ 浮き袋

行きか、帰りかぐらい、このぐらいの操作でできるわけですから、名人目の前の方としては、これは大きな失敗だったのではないでしょうか。

第8位


中田喜子
[特待生5級]

荒神輿 はねる鳳凰 波けたて

中田:神奈川県茅ケ崎市で「浜降祭」というお祭りがあるんですね。これは、神輿を担いだまま海の中に入る祭りなんですよ。その情景を詠みました。


夏井先生:基本通りに一つずつ積み上げてこそ、後々コケない、これとても大事なことですから。ちょっとその気になったら、中八にしたりして、大体みんなコケていきますからね。中田さんはコツコツやりましょうね。
で、これ、なにがもったいないかというと、語順なんです。映像を撮ってきてそれを編集すると考えてください。荒神輿の光景がいきなりボーンと映る光景から攻めていくのか、波をけたてている足下から入っていくのか、どっちが“荒神輿”という季語が強く印象に残るか、そうゆう選択になっていくんですね。
この句の場合は、こっち(波)からの方が絶対得です。“波けたて”、けたても荒々しいんですから、漢字で書きましょうよ。書けなかったわけじゃないですよね? ひらがなの方がいいかなと判断した、と。でも漢字がいいです。これ(はねる)も漢字で書きましょう。

波蹴立て 跳ねる鳳凰 荒神輿

こっちの語順から来ただけで、順位もシュッといきますよ。

第7位


三遊亭円楽[特待生3級]

夕凪の 帆に寝 葉巻の老漁師

円楽:4年前にね、国交回復前のキューバに行ったんですよ。そしたら、ホントに海がきれいでね、ヘミングウェイを思い浮かべてバーで飲んでたの。漁師と会ったりして、海に潜ったり、色んなことした中にね、本当ベタ凪のときにね、葉巻咥えて、潮焼けのおじいさんが。。。


夏井先生:作者がわかって、この素材が円楽さんのだというのにちょっと驚いていますけども。目を付けた光景が非常に面白いですね。夕凪の帆があって、そこに寝そべった老人がいて葉巻をくわえてる、あっ、これは外国の光景だってわかるじゃないですか。こうゆう素材を使ってくれるようになれば、この人はもっと広がるとホントに思いますよ。勿体ないのはね、「寝る」と「葉巻」がぐちゃぐちゃってくっついてるからよくわからなくしている。ここでちゃんと切って、“夕凪の帆に寝て”で切りましょう、これで寝たってわかるね? ここから寝ているのは誰かはっきりする。“老漁師”っていったら音数とるけど“老漁夫”っていったら短くなるでしょ。

夕凪の帆に寝て 老漁夫の葉巻

最後に葉巻が残るわけですよ。こうすると、最後葉巻のアップにずっといくでしょ。そうすると夕凪の気だるいかんじに、葉巻の匂いがフーってしてくるわけですよ。こうしたらよかったんだけどね。(差し入れの)アンパンは査定になんの関係もありません。
一同:(笑)

第6位


梅沢富美男[名人6段]

星空の 螺鈿を恋ふる 夜光虫

梅沢:夜を詠ませていただきました。“螺鈿”ってみなさんご存じですよね、貝殻の? 貝殻のような星空があるんですよ。最近、ほら、夜光虫って有名になりましたよね。夜光虫も空の星に負けずと光っている。なっちゃん、なにが6位なんだ、この野郎。1位の句だろ、こんちきしょー。許せることと許せないことがある。


夏井先生:一見カッコよく見えますけど、じつはやり過ぎてる。カッコいいことやったらなんとかなる、と下心が見える。まず“星空の螺鈿”、ここは比喩ですね、螺鈿細工のような美しい星空でございますよ。ここまでで止めておきゃいいのに、“恋ふる”という擬人化を入れてくる、しかも擬人化の中でも心情が溢れる“恋ふる”という言葉、ここでかなりしつこくなってきている。“夜光虫”という季語が主役になってもらわないといけないのに、比喩とか擬人化の方が前に出てくる。擬人化がダメって言ってるんじゃないですよ、比喩と擬人化をスッと入れながら、映像もきちんと描くことができる、そうゆう動詞があるんです。それを名人なら知ってると思うんだよね~。ここ(恋ふる)消します。“さざめく”という言葉知ってますか? 人の声がずっと聞こえてくる、という。。。“螺鈿さざめく”というと、難しい言葉で五段活用っていうんで、「螺鈿がさざめく」とも読めるし、「さざめく夜光虫」と下に繋がっても読めるという、便利な形なんです。

星空の 螺鈿さざめく 夜光虫

そうすると、全体読むと、『星空の螺鈿がさざめいていますよ、それに呼応するかのように夜光虫もさざめいていますよ』、こうゆう風にくると品が良くなるんですねー。これは品の問題ですから。
梅沢:いい加減にしろ! 俺が品が悪いって言うのか! 顔か! 態度か!
夏井先生:この句に品がないのは、作者の人格が影響している。
一同:(笑)

第5位


千賀健永(Kis-My-Ft2)[特待生3級]

雷鳴を 吸ってうねるや 蒼き海

千賀:この写真を見た時に、本当になにも浮かばなかった。海の中の魚にすると、魚の句になっちゃうなと思って、どうしよう?って思って、海の表情を変えようと思って、雷雨でイメージして。雷鳴を吸ってうねってる波のイメージ、“うねる”っていう言葉もいいな、と。


夏井先生:この句は、まず発想から褒めたいですね。あの天気のいい、気持ちのよい青から、雷が鳴ったらどうなるんだろう?と、ここにいけるというのはまず一つ。
それから雷鳴というのは音なんですけど、稲光ですね、雷光を吸うってのはあるかもしれませんが、音を吸い込むという発想ですよね、ここも褒めるべき点だと思います。
そして、ここ(蒼き海)ですよ、こういった展開でくると、大体海を暗い海にしたいんです、「暗き海」とか。そうすると、大分点数が下がって、順位が下がってゆきます。この”蒼き”、この色はですね、生気がない青というか、くすんだ青というか、そんな印象の青になるので、くすんだ青が出てくることによって、書いてないけども稲光の印象が美しく受け取られます。
勿体ないのは真ん中の描写。この“や”ってここで強調しようとしたのね? そうゆうやり方もあるんだけど、この句の場合は“や”に頼らないで、複合動詞がいいんです。
まず、”吸う”というここがいいわけですから“吸い”、こっから畳み掛けます。“うねり立つ”、動詞が立て続けに入ります。

雷鳴を 吸いうねり立つ 蒼き海

吸いこんでうねり立つ、激しい雷雨が終わった瞬間に吸い込んだかのようにうねり立つ。こうすると、あなたもう(上へ)シュッと行く。千賀さん、俳句初めて2年ぐらいでしょ? あなた、2年でここまでちゃんと言葉選びが出来て、本当によく努力していると思いますよ。もう本当期待してますので。

⇒上位編につづく。。。

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