“プレバト俳句”再視記(さいじき)

バラエティ番組「プレバト」の人気コーナー『俳句ランキング』を振り返り。芸能人たちの才能と、毒舌・夏井いつき先生の評価や、いかに!?

学校の傘立て(6/22放送分)

time 2017/06/23


◎今週の俳句テーマ『学校の傘立て』

最下位:才能ナシ


千原ジュニア
[37点]

梅雨寒に ボタン信号 押し忘れ

ジュニア:小さい時に田舎だったので、押しボタン式の信号やったのを、傘で忘れてたのか、見えなかったのか、全然変わらへんなと思いながらずっと信号を待ってたのを思い出して、それやと。。。


夏井先生:作者わかって、本当学ばない男だな、と思って。ボタン信号ってなんですか? ボタン電池の親戚ですか? 押しボタン式信号機って言うんじゃないんですか?
「おしぼたんしきしんごうき」で7と5が出来ちゃうんでしょ? それじゃ、俺が言いたいことが入らないから、「ボタン信号」ってはしょったんでしょ? そのはしょるという行為が本当に陳腐。ちゃんと入れましょうよ。入れるのが、俳句を作るっていう行為ですよ。正しく書いた後に悩んでくださいよ。“押しボタン式信号機”でしょ。こうやったらなかなか(残りの)字が入らない(と言う)。“梅雨寒や 押しボタン式信号機”ってやれば作品として成立しはじめるわけですよ。でもあなたは人に全部しゃべっておかないと相手に伝わらない、読者を信じてない作家なんです、だからこうなっちゃう。
“押し忘れ”、これが一番へたくそですね。映像を言えばいいんです。状況を語ります。
字余りになるけど、“ずっと赤”って入れてみましょうか。

梅雨寒の 押しボタン式信号機 ずっと赤

ちょっと長いですけども、言いたいこと全部入れたらこうなります。

第4位:凡人


芦田愛菜[40点]

青空や 赤い長靴 鬼転ぶ

愛菜:雨だと思って長靴を履いてきたけど、休み時間に晴れて、鬼ごっこしてたら長靴で走りにくくて鬼が転んだのを想像しながら書きました。


夏井先生:季語がない、というのは問題点になりますが、ただ、無季、季語がない句も俳句にはあるので、「無季の句として意識して書いているのか」「うっかり季語がないのか」判断しなくてはいけないということですけど。長靴とか青空とか、季語とうっかり思う人もいらっしゃるので、明確な季語を入れましょう。「梅雨晴間」とか、「梅雨晴れ」とか、これ入れるだけで最初の問題点は一発で解消するわけですね。
「梅雨晴間」でもいいんだけど、“や”を活用しましょうかね。“梅雨晴れや”と入れますよ。そうすると、青空も“晴”の字で出てきますね。季語が入る。
もう一つの問題点は、最後に出てきた“鬼”、多分読んだ人はみんな同じように思ったと思うんですが、「遊びの鬼」なのか、「赤鬼・青鬼」なのか、ちょっとわかりにくい。
遊びということなら、○○鬼って、遊びの名前、ケンケン鬼とかあるのか知らないけれども。知らないんだもの、子どもの遊びw
仮に、ケンケン鬼があったとすると、

梅雨晴れや 長靴赤き ケンケン鬼

でも、こうゆう風にきちんと映像をとって、一句に構成できるんですから、もう一回挑戦してみてくださいよ。次のあなたを見てみたい。

第3位:凡人


吉田照美
[55点]

五月雨は ファの音ばかりの 独裁者

吉田:僕は絶対音感はないですからね、ただ雨の音が気になって、大体ファーって降っているかんじがしたわけです。五月雨は他の音もかき消しちゃって、人との会話もママならないみたいな、本当にうるさいな、ってゆう句です。


夏井先生:まずですね、この句パッと読んだときに意味は分かりにくいんですが、詩を作ろうという意思は非常にはっきりとある。そこは評価高いですね。なにが良いかというと、五月雨というものの音はファの音ばかりだと、心の中で聴きとめるわけですよね。詩人の言葉が上五、中七できているわけですね。ところが、最後“独裁者”がこの位置で出てくると、なんか五月雨の中に濡れたまま独裁者が立っているみたい、に思われるわけですね。発想は素晴らしいんだけど、表現そのもの、字面・語順が独りよがりになってる、あんたが独裁者でしょ。
一同:(笑)
夏井先生:でも語順をちょっと変えるだけで一発で才能アリにいくタイプです。将来性のある凡人ですね。
“独裁者”ってゆうのは五月雨を比喩しているんですよね、そう書くだけです。“ファの音ばかり”という、この詩の言葉から始めましょう。
“ファの音ばかり”ってなんだ?と思わせて、カットを切った瞬間に“五月雨は独裁者”とひっくり返すだけで、独裁者が何者か一発でわかる。

ファの音ばかり 五月雨は 独裁者

こうゆう発想、大事にした方がよいですね。絶対ある日化ける、この人は。

第2位:才能アリ


井森美幸[70点]

五月雨 並んだ傘と 始業ベル

井森:学校の中で登校してきて、傘入れようかな、でもどこに入れようかな、入れるとこないなって迷ってるんです。で、迷ったとこにキーンコーンカーンコーン、あぁ行かなきゃっていう、音を絵から感じるという。。。


夏井先生:こねくりまわして良いことは何もない。発想自体が素晴らしいとか、そうゆうわけではないんですけど、非常に手堅くまとめてきたわけですね。この、手堅くまとめられない人が凡人より下にこう、渦巻くということになるわけですね。
いいところから具体的に褒めていきます。まず“五月雨”、季語です。それから傘が並んでおかれているという状況、そして“始業ベル”という音、それぞれの言葉が情報が重ならないようにきちんと選ばれているというのがいいところの一つですね。で、いまお話を聞いて、もう一ついいところがありました。意図が良いです。傘がギッシリ詰まっていて、どこに入れたらいいかなって、慌てた感じを表現しようとした、その意図が良いです。ただ、この字面に今聞いた意図がそんなには入っていない。その意図を言葉できちっと入れたら1位と2位が逆転したこともありえたかもしれない。ちょっとやってみますね。
傘立ての映像からいった方が絶対得です。(傘を)入れようと思って慌ててるわけでしょ?“傘”じゃなくて“傘立て”ってちゃんと言いましょう。傘立の状況を言うんです、“ぎっしり”詰まってる、と。そして、五月雨っていうと音数とりますから、“梅雨”だと2音で済む。

傘立てはぎっしり 梅雨の始業ベル

こうすると、『どうしよう、どうしよう、授業始っちゃう、どこに入れようかな?』という切迫感少し出る。そんなかんじです。

第1位:才能アリ


高橋ひとみ[71点]

梅雨の空 とりどりの傘 チャイム待つ

高橋:この梅雨の時期、たくさんの色とりどりの傘が授業が終わって帰るのを、傘たちが待っている、という。。。


夏井先生:発想そのものが飛び抜けてるわけじゃないけど、あの写真を誠実に丁寧に伝えようとして、それを破たんのない形でやれている、というところなんですね。“梅雨の空”という季語を含むモノトーンの映像、それから“とりどりの傘”、色合いも見えてきますね。具体的な傘というモノも見えてくる。そして、チャイムという音のことを言うのかなと思ったら、“チャイム待つ”とささやかな時間と空間が“待つ”という動詞で表現されている。このまんまでも、成立はしているんですが、まぁ、“とりどりの”というところがもうひと押しなんかできるかな、というかんじがあります。色んなやり方があるんですが、例えば、数詞を上手に使うと、ちゃんと映像が作れる。それやってみます、非常に簡単。“とりどりの”と言わないで、だいたいこのくらいの数という言い方です。“百本”って仮においてみます。

梅雨の空 百本の傘 チャイム待つ

もちろん、百本は数えて百本ということではなくて、大体これくらい多いよ、ということ、美しく言う『美称』という言い方になります。
すると、一本につき一人の子どもが現れて、一本ずつ取って帰ってゆく、そういう映像も、ちゃんと、このあとに見えてくるんですね。

特待生1級


フルーツポンチ村上[現状維持]

五月雨や 彫刻刀を 持ち替える

村上:映像としては梅雨のときに版画をしている。彫刻刀を持ち替えるときの危うさ、雨の中の不穏なかんじ、の取り合わせと、版画の雨だと線が細いので、雨を彫るために彫刻刀を持ち替えているという気持ちも自分の中ではこの中に入れた。。。


夏井先生:この俳句の評価のポイントは、作者の狙いが実現できているか、否か。
発想はいいですね。“五月雨”という季語と、“彫刻刀を持ち替える”という行為は一見なにも関係ないんですけど、17音の器に、この2つをスッと乗せたときに、雨の絵を彫ってるのかもしれない、アトリエかもしれない、教室かもしれない。その建物の外はずっと五月雨が取り囲んでるんだ、と。ちょっと湿気の感じと、彫るときの木の質が変ってゆく感触とか、そうゆうものを読み手はちゃんと受け取ります。読者を信じたところまではいいと思います。でも、やっぱり一歩詰めが足りないというか、自分の発想の一番よいところがもうひとつハッキリ打ち出せていない。そこをちょっとだけやるといいなぁと思います。いま聞いてなにが一番いいと思ったかというと、彫刻刀で細い線で五月雨を彫っているかもしれない、というあなたの意図は大変すばらしいですよ。
書こうよ。“彫刻刀”のアップから始めた方が得ですよ。“彫刻刀 持ち替え”、こっからひっくり返る。外の五月雨にいく。“五月雨を”、ここで彫りましょうよ。

彫刻刀 持ち替え 五月雨を彫らん

“彫らん”というのは「彫りましょう」ということですね。そうすると、版画家の木を削るかすかな音も聞こえてくる、そのかすかな音の向こうに五月雨のささやかな音も聞こえてくる。
名人になるというのは、自分のそうゆう素晴らしい発想を文字で実現する、それがやれてこその名人ですから、もうちょっと足踏みしてください。

名人初段


東国原英夫
[1ランク昇格]

送り梅雨 船員送る 千の傘

東国原:ちょっと昔に海上自衛隊がですね、現場に赴任する光景を見たんです。そこに家族や関係者の方たちが岸で傘を差して、送り梅雨なんですね、期待があったり、不安があったり、1つ1つの傘の思い思いがそこにある。これは、名句なんだけどなぁ。。。


夏井先生:この句のポイントは、上五“送り梅雨”という季語が生きているか、否か。
まず、“送り梅雨”という季語がどうゆうものなのか、しっかり押さえておかないと判断ができないですよね。“送り梅雨”梅雨明け間近の時期なんですけど、ただ間近といいつつですね、強い雷を伴った豪雨が降る、そうゆう時期でもあるんです。ですから、作者のさっき語ってくださった意図というのが、もうすぐ梅雨は明けるけど、今は雷と豪雨の中の船出であるよ、それをこの季語に託したわけです。梅雨の色んな表情の季語がいっぱいあるんですが、これを選んだところがまず見事だというのが一つですね。
それから意図的におやりになったと思いますが、“送り”“送る”と“船(せん)”“千”、ここらへんの響きは十分に企んだ上でのこと。さっきもありましたね、千という数詞で、人の数だけではなくて、広さ・迫力を表現しようとしている。で、いまお聞きするとけっこう大きな船出なんですね、自衛隊がと仰ってたから、ということは漢字を1文字を変えて、もっと広くすることは可能です。“船員”というと1人の人ですね、これを1文字変えて“船団”とすると、

送り梅雨 船団送る 千の傘

こうすると、船が1つや2つじゃないわけです。船団を送るための千の傘、千というのは具体的な数ではなく、大きいという美称ですから、これをやってくれたら、パパーンって上に行く。
東国原:質問なんですが、“千”を“万”にするのかと思った。
夏井先生:降格してもいいですか!?
一同:(笑)

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