“プレバト俳句”再視記(さいじき)

バラエティ番組「プレバト」の人気コーナー『俳句ランキング』を振り返り。芸能人たちの才能と、毒舌・夏井いつき先生の評価や、いかに!?

初夏の箱根(5/25放送分)

time 2017/05/26


◎今週の俳句テーマ『初夏の箱根』

最下位:才能ナシ


渡辺えり[35点]

秀吉と 初夏に夢見る チャップリン

渡辺:前に、新婚旅行で箱根に行ったんですね。チャップリンが泊まった部屋に泊まったんです。箱根のお湯って秀吉の小田原征伐で有名になりましたよね、秀吉も入ったかもしれない。戦によって国のリーダーになろうとした欲望の人・秀吉と、喜劇によって世界平和を夢見た喜劇王・チャップリンが同じお風呂に入っている、この不思議さ。


夏井先生:17音というのは小さな黒塗りのお盆と思っていただきたいんですが、その黒塗りのお盆にどう季語と残りのものを配置するか、余白とか、ゆとりがあってこその俳句なんです。この場合はその小さなお盆にフルコースを並べてみた、そんなかんじになってるんです。えー、破裂してしまったというケースです。
私が直してもいまのは全部入らない。少なくとも、近所の秀吉さんと寝てて、とかならないようにだけしますね。
まずは“初夏の夢”としましょう。この人は何か夢をみてるんだな、まずこれを立てる。
そして頭にきます。“秀吉そして”と並べましょう。

初夏の夢 秀吉そして チャップリン

こうすると、作者が初夏に夢を見て。。。
渡辺:夢をみてるのは秀吉とチャップリンなんです。チャップリンは世界平和を、秀吉はリーダーを。。。
夏井先生:そうですね。あなたの構想は、ぜひお芝居にして頂きたい。
一同:(笑)

第4位:凡人


中田有紀
[45点]

歩を進め 箱根空木の ごとき頬

中田:箱根といったら登山やハイキングというイメージで、私も山登りをするんですけども、この季節の花として箱根空木(うつぎ)がありまして、花が白→ピンク→赤と色を変えて咲くんですよ。山登りしている自分も汗ばんできて、頬が紅潮していく、そうゆう様を詠んだんですけど。素晴らしい句だと思ったんですけど。。。


夏井先生:箱根空木、空木にも色々ありますけどね、空木のような気に咲いている花を表現するときは、「花空木」とか、「空木の花」とか、「空木咲く」とか、そういう風に言わないと花と受け取られないので、季語として認識されないんです。いま聞いて私もわかったんですけど、この場合は中七からいった方がいいです。箱根空木のアップからいきましょう。
“はこねうつぎ”で一語多いですが、字余りは上五ではOKです。そして“咲く”と言い切りましょう。これで季語として機能し始めます。“歩を進め”でもいいんですが、山をずっと登っている感じを出した方がいいでしょうかね。“登りきし”、きしってわかりますか? 登ってきましたってことですね。“ごとき”はやめて、例えば、

箱根空木咲く 登りきし 君の頬

こうすると、スッと行くんです。

第3位:凡人


橋本良亮(A.B.C-Z)[50点]

旅の途中 箱根空木に 舞う心

浜田:(箱根空木被りで)さっき(4位)の見ながら、なんか言えよ。
橋本:先生がすごくダメ出ししてたので、心の中で『まずい、終わったな』と思ってたんです。ちょっといいなと思ったのが“舞う心”で取り戻した感があったんですね。咲く感じがあるじゃないですか。それをちょっとイメージして。。。
フジモン:“舞う心”がいいって言ったけど、俳句の中ではよく見る言葉ですよ。
橋本:スタンダードなんだ。。。


夏井先生:“舞う心”、スタンダード違います、陳腐です。(一同笑い)
お尻からいきましょう。“舞う”という気分をちゃんと花が咲いてるんだとわかるように、しかも映像化します。これ、大事な肝のところ。“風に咲く”とおいてみます。で、“箱根空木”にきます。これで花だとわかりますね。“や”と詠嘆にしましょう。最後、“旅の途中”6音ですけども、“旅さなか”とすれば十分でしょう。

風に咲く 箱根空木や 旅さなか

こうやったら(上へ)シュッと(行く)。

第2位:凡人


真琴つばさ
[52点]

初蛍 湯本の宿に 光りけり

真琴:湯本で蛍を一生懸命育ててる方がいらっしゃって(蛍を)見れる、と。行くと人生初の蛍になるんです。蛍をまだ生で見たことがない。なので、それをかけて。。。


夏井先生:光らない蛍があったら、持って来い! です。光らない蛍がいたときに初めて「光らぬ蛍」と言うわけです。ですから“光りけり”は要らない。ただ、上五中七はムードがありますね。後ろから詰めてきた方がこの句は絶対よくなります。
例えば、“湯本の宿の 初蛍”とやれば調べが落ち着くでしょ。
(上五は)私が勝手に想像してたのは、川の音が聞こえるなら“川音や”とすればいい。いまのお話を伺うと、こんな古い日本語がいいかなと思いました。「憧る」と書いて、古い言葉で「あくがる」と読むんです。(意味は)何かに心奪われて、私の心が私の体から離れていくさまで、「憧れ」の語源なんですね。
いまのお話だと、まさに“あくがれている”。それを入れて、

あくがるる 湯本の宿の 初蛍

第1位:才能アリ


ケンドーコバヤシ
[70点]

故郷と 違えど同じ 夏の山

コバヤシ:他の季節ではあまり感じないんですけど、初夏のグッと青くなってきた山見たら、不思議と懐かしい気持ちになる。僕は箱根に縁もゆかりもないんですけど『懐かしいな~』と思う不思議な感覚を、さらりと詠んでみました。


夏井先生:作者がわかって鼻からなにか悪いものが飛び出したみたいな気分で、本当にびっくりです。この句は読んだだけで、私の故郷じゃないんだけどこの夏の山に向かった瞬間に故郷であるかのような気がした、という感慨を非常に素直に詠んでる。それを“夏の山”という季語が支えてくれてる、ここが良いですねぇ。
ちょっとだけ直していいですか。“違えど”でもいいんですが、元々「違う」っていうのは相違する、食い違う、というニュアンスが強いので、ここだけちょっと変えますね。

故郷に あらねど同じ 夏の山

こうすると、「私の故郷ではございませんが」というのがすっと出てくる。
いやー、なんか才能あったんや、びっくり、びっくりw

特待生5級


中田喜子
[現状維持]

雨あがる 箱根うつぎの 咲(わら)う径

中田:箱根空木は白から濃い桃色に変っていく、雨に洗われて美しく色鮮やかに咲いている、という光景を読んだんですが。。。


夏井先生:やっぱり特待生は勉強してますね。ふつうに「咲く径」としてもいいんですが、素直にやらずに“咲(わら)う”と読んで、しかも咲いているということだ、と。勉強してますよ、ちゃんと。この句の評価のポイントは、ここ、上句の“雨あがる”になります。
“雨あがる”で5音使ってます。2音で言えます。雨の後と書いて“雨後(うご)”。さらに映像を入れると、遠近感が生まれます。“雨後の空”、雨があがって空が晴れてまいります。

雨後の空 箱根うつぎの 咲う径

こうすると、雨があがります、空の一角から晴れてまいります、そこに箱根空木の美しい花の咲いている径が見えてまいります。遠近感と色合いが違ってくるでしょ?

名人3段


FUJIWARA藤本
[1ランク昇格]

はこね号 これより初夏に 入ります

フジモン:こどもにもわかりやすいねぇ。。はこね号というのは箱根湯本駅に向かう特急列車のことですけど、特急列車に乗ってて、新緑の生い茂る箱根の山に入る前に、こういった車内アナウンスがあったらいいな、と。


夏井先生:この句のポイントは、下五“入ります”という口語が成功しているか、否か。
“はこね号”という固有名詞、これもけっこう効いているんです、全体読んでるときに。
「はこね」というだけで場所がわかる、特急に載ってるんじゃかいかな、ということもわかる。そして、“これより”って言うから、どっかの場所に入っていくのかなと思った瞬間に“初夏”という季節が出てくる。これより初夏に入るというのがはこね号に乗って認識できるわけじゃないんだけど、山の中にずっと入っていったときに、いかにも初夏のような新緑の美しい、そういうところに入っていきます、風が変わってきますよ、というかんじを、ちゃんと「初夏」という季語を信じてやっているのが良いと思います。
全体を見たときにわからない言葉がないじゃないですか。分かりやすい句というのが俳句ではひとつの価値でもあるわけですね。難しい言葉を使っちゃダメってことじゃないんですよ。こういう句の味わいはある。
全国の小学校、色んな所へ行くんですけども、『フジモンの句が好きです』という子どもたちがたくさんいます。子どもたちが必ず言うのは『努力してるからえらいと思う』。
小学生に頼まれる、『先生、フジモンのことをお願いします、梅沢をやっつけてやってください』って。
一同:(爆笑)

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