“プレバト俳句”再視記(さいじき)

バラエティ番組「プレバト」の人気コーナー『俳句ランキング』を振り返り。芸能人たちの才能と、毒舌・夏井いつき先生の評価や、いかに!?

こいのぼり(5/4放送分)

time 2017/05/06


◎今週の俳句テーマ『こいのぼり』

最下位:才能ナシ


市川由紀乃
[30点]

鯉のぼり しあわせ乗せて 恋ダンス

市川:青空を泳ぐこいのぼりが、まるでダンスをしているかのように見えますよね。こいのぼりの”鯉”と恋愛の”恋”をかけまして、星野源さんの恋ダンス、しあわせを全国に乗せてくれたじゃないですか。いろんなものを乗せてみたら、こうなりました。


夏井先生:あのね、ダジャレが悪いってわけじゃないんですよ。流行の言葉を入れてはいけない、ということも全くありません。俳句はなにをやってもいいわけですから。ただ、“鯉のぼり”と“恋ダンス”というのは、詩のレベルにいかない、ダジャレのまま沈没している。さらに、“しあわせ乗せて”というフレーズですけども、あまりにもオリジナリティーのないフレーズということですよね。本当いうと(後半全部)ビャーっと消したいんですけど、ご本人の工夫が全くなくなりますので、“鯉のぼり”と“恋ダンス”を残して、どうにかしてみます。多少の詩を醸し出して、多少の映像を入れてみます。真ん中からいいきましょう。“この風に乗れ”と命令にしましょう。

この風に乗れ 鯉のぼり 恋ダンス

“この風に乗れ”のあと、鯉のぼりの映像がでてきます。まるで恋ダンスしてるみたいだわ、と一番言いたいことを辛うじて残します。そして、“この”“鯉”“鯉”と頭の韻を点々と「こ」の音を響かせて調べを作ります。

第4位:才能ナシ


宮田俊哉(Kis-My-Ft2)[35点]

風香る 鯉の家族が ゆらゆらと

宮田:2回才能アリ1位を獲ったことがあって、それからなんか1回わかんなくなってきちゃって。ちょっと無に戻ってみようと思って。こいのぼりをシンプルにこいのぼりと言いたくないな、と。で、“鯉の家族”ってして、あとリズム感とか、“ゆらゆら”どうかな、みたいな。


夏井先生:季語“風香る”の字が気になるんですよ。これは普通画数の多い方の「薫る」ですね。「薫風」というのが主たる季語で、その傍題で「風薫る」というのがあるので、やっぱこっち書いた方がいいでしょうね。本人としてなんか理屈があったんでしょうけど、聞くまでもないと思います。
そして、17音使って言ってることを一言で言えます、“こいのぼり”って言ったら終わるんです。
一同:たしかに(笑)
夏井先生:あなたのやったことは全て無駄な努力として、“こいのぼり”という季語に吸収されていく。ですから、本当の鯉の家族としたら、それなりの光景になるんです。『風薫る頃、水面を揺らして泳ぐ鯉の家族』、そういう光景にしたかったらどうするか、やってみますよ。風薫るのあとに、水を入れたらいい、“水面や”。

風薫る 水面や 鯉の家族らも

家族のあとに“らも”と入れることで、頭上に泳いでいるこいのぼりも、池の鯉の家族も、上下をこれで言えます。

第3位:凡人


森口博子[50点]

はしゃぐ日の 母の愛知る 菖蒲の湯

森口:こいのぼりを見ると、子どもの日にはしゃいだことを思い出す。うちに帰った時に、湯船の中にバサッとグリーンの葉っぱが入ってるのを見て『なんじゃこりゃー』って思ったんですけど、母から菖蒲の湯の説明を聞いたときに、ママって色んなこと考えてくれてるんだなって初めて知ったのが、毎年鯉のぼりを見たら思い出される、という母への愛と感謝の句です。


夏井先生:この句の中で一番要らないのは“知る”。母の愛が出てきて、菖蒲湯という季語が出てくるわけですから、2つ出てくりゃ『お母さん、ありがとう』みたいな気持ちは当然わかりますから、たった2音でも説明する必要は全くないんです。
さらに言わせていただくと、母の愛とか、抽象的な思いをたった17音の俳句の中に持ち込んでくるのはすごく難しい技なんです。本当言うと、“はしゃぐ日”も消したいし、“母の愛知る”も消したいんですけど、ご本人一番言いたかった“母の愛”は残しましょう。
念を押しますが、かつてのその日のことを思い出してる、でいいんですね?
じゃ、下句から始めましょう、さっさと菖蒲湯お入りになってください。
“菖蒲湯”としっかり言いましょう。リアリティーが非常に薄いので、匂いで入れます。
“菖蒲湯の匂い”、これで匂いがぷわーと立ちますね。それから、思い出に行くんです。簡単なことです、「あの日の」でもいいし、「かの日の」とやってもいいですね。

菖蒲湯の匂い かの日の 母の愛 

こうすると、“母の愛”という一番言いたかったことがスッと残っていきます。

第2位:凡人


西川貴教[55点]

都市(まち)の空 窮屈そうな こいのぼり

西川:僕、滋賀県の田舎の育ちでしたし、田舎だから雄大に泳げるところを、なかなか都会だと、鯉のぼりをあげる場所もなくなってますしね、ってゆうのがちょっと伝わればいいな、と。


夏井先生:これは、“とし”と読ませたいですか、“まち”と読ませたいですか?
西川:“まち”で、けっこうです。
夏井先生:では、“都市 街の空”、これでいいですか? 空から入ってくるかんじはいいかんじなんですね。ただ、本当の問題点は別のところにあるんです。
中七の“窮屈そうな”という語りなんですけど、これ作者の感想のようなものなんですね。ここを、ちゃんと映像にするか、しないか、で才能アリにいくか、いかないか、分かれるんです。
何を見たから窮屈そうだと感じたのか? 見たものを書けばいいだけ。
空はどういう状況なのか、を書きます。“狭しと”とストレートに書けばいい。
あとで、こいのぼりが出てくる、ただ“こいのぼり”だけでは映像になりません。映像がまだ明確ではない、ここに動きをつけるんです。

街の空 狭しと 風の鯉幟

“こいのぼり”は漢字でお書きになった方がカッコいい。締まってくるでしょ、映像が。こうすると、才能アリにポンッと(上がる)。

第1位:才能アリ


千原ジュニア
[70点]

逆風を 飲み込み昇る 五月鯉

ジュニア:これはやっぱり、逆風になればなるほど泳ぐ、昇っていく、というね。。。


夏井先生:“逆風”から始めるのに驚きますね。“逆風を飲み込み”ときますから、実際の風というより、人生を語っている言葉かな?ってみんなそう読みはじめるわけです。で、人生のことだけ語って終わるのかな、と思ったら最後に“五月鯉”という季語が出てくることによって、現実の光景も詠んでいるんだ、ということがわかる。語順に非常に心を遣っているということが1つです。
もう1つ言わせてもらうと、“昇る”という動詞がここにあることによって、一気に風にあおられて昇っていくというのが、全部読み終わったあとにわかる仕組みになってるんですね。ここに“昇る”をもってきたのも褒めたいと思いますね。
(ジュニアは)いままでこう、わけわからないことをぐちゃぐちゃやって自滅していったじゃないですか。ここまでシンプルに書こうとしているのは褒めたいと思います。
で、1つ(ダメ出し)。“逆風”、本人は人生を言いたかったということで、これはこれで言いたいことは伝えられているんですが、俳句という作品全体として考えた時に、ここはもったいない。
漢字一文字で映像がいかようにもやれるんです。例えば“山風”。

山風を 飲み込み昇る 五月鯉

そうすると、谷の風がグワッとうねってくる。でしょ?
山じゃなくて海だっていいんですよ。“海風”、潮の匂いがしてくるでしょ?
『いやいや、僕は街に住んでます』ってんなら、“ビル風”とやってもいい。
もっとやれますよ、朝を置いたら、時間情報だって入る。
こうやって映像を、背景を入れることによって、季語“五月鯉”が生き生きとしてくる。その季語の生々しい勢いを描けたら、特待生にいけますよ、と。

名人2段


FUJIWARA藤本
[1ランク昇格]

鯉のぼり 挿され五つの ランドセル

フジモン:小学生の時に図工の時間にこいのぼりとか作りませんでした? それをランドセルに挿して帰ってる5人の小学生っていう俳句なんです。それがちょっと、伝わるかな?ってのがあるんですけど。。。


夏井先生:この句のポイントは、中七の“挿され”という動詞が、機能しているか、否か。
これはね、非常にコンパクトに映像化できています。まずね、語順が面白いんです。“鯉のぼり”って一番最初に出てくる、そうすると絶対みんな大きな鯉のぼりを思うわけですよ、ふつうの日本人は。それがいきなり“挿され”? 鯉のぼりに対して挿されるってありえない、じゃあ、何がどう挿されてるんだ、と小さな疑問を持って下にいくと、“五つの”。もっとわからなくなる。
丁寧に読んでいくと、最後に“ランドセル”が出てくるわけですよ。そうすると、鯉のぼりが挿されていて、五つあって、どこに挿す? あっ、図工のアレだってアリアリとわかりますよ。
もっと言うと、GW前の下校の光景だと思いますよ。“挿され”の位置が絶妙な場所にあります。で、“五つ”という数詞が光景として5人の小学生の映像に結びついていくわけですから、工夫している所はちゃんと工夫してますね。
あの写真から、こうゆう小学生を思えるというのが、やっぱり名人の発想力ですよ。
(直しは?)いらない、いらない。

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